日本工業規格
ス プ レ ー ガ ン
Spray guns
1.適用範囲
この規格は、圧縮空気によって塗料を霧化し、被塗物に付着させて塗装する一般塗装
用スプレーガン(以下、スプレーガンという)について規定する。
備考
1.この規格の引用規格を次に示す。
JIS B 0202 管用平行ねじ
JIS B 5402 塗料用フォードカップ
JIS K 5531 ニトロセルロースラッカー
JIS P 3101 印刷用紙
2.規格の中で{ }を付けて示してある単位及び数値は、従来単位によるものであって、
参考として併記したものである。
2.用語の定義
この規格で用いる主な用語の定義は、次の通りとする。
(1)パターン
平面に対して直角に、瞬間的に吹き付けたときにできる塗り跡の形状。
円形のものを丸パターン、楕円形のものを楕円パターンという。
(2)パターン開き
パターンの大きさ。
丸パターンでは円形の直径、楕円パターンでは楕円形の長径で表す。
(3)丸吹き、平吹き
丸吹きとは丸パターンが、平吹きとは楕円パターンが得られる噴霧方式。
(4)本 体
スプレーガンの主体となる部分。これに各部分品を取り付ける。
(5)空気キャップ
空気を噴出して塗料を霧化し、パターンを整える部品。
(6)塗料ノズル
塗料を噴出する部品
(7)塗料ノズル口径
塗料ノズル先端の噴出口の内径
(8)ニードル弁
塗料ノズルの噴出口の開閉を行う部品。
(9)空気弁
空気通路の開閉を行う部品。
(10)引き金
指によって操作し、ニードル弁と空気弁とを作動させる部品。
(11)塗料噴出量調節装置
ニードル弁の動きを加減し、塗料噴出量を調節する装置。
(12)空気量調節装置
スプレーガンが使用する空気量を調節する装置。
(13)パターン開き調節装置
空気キャップの角部小穴に送る空気量を加減し、パターン開きを調節する装置。
(14)吹付け空気圧力
引き金を引いたときの空気ニップル部の静圧。
(15)空気使用量
スプレーガンが使用する単位時間当たりの空気量。
(16)塗料噴出量
吹き付けによって塗料ノズルから噴出する単位時間当たりの塗料の容量。
3.種 類
スプレーガンの種類は、塗料供給方式、被塗物による区分、噴霧方式及び塗料ノズル
口径によって分類し、表1のとおりとする。
表1 スプレーガンの種類 単位mm
塗料供給 方 式 |
被塗物に よる区分 |
噴霧方式 | 塗料ノズル口径 | |||||||||||||
重力式 | S | 丸吹き | 0.5 | 0.6 | 0.8 | 1.0 | - | - | - | - | - | - | - | - | - | - |
吸上式 重力式 |
S | 平吹き | - | - | 0.8 | 1.0 | 1.1 | 1.2 | 1.3 | 1.4 | 1.5 | 1.6 | 1.8 | - | - | - |
L | 平吹き | - | - | - | - | - | - | 1.3 | 1.4 | 1.5 | 1.6 | 1.8 | 2.0 | 2.5 | 3.0 | |
圧送式 | S | 平吹き | - | - | 0.8 | 1.0 | 1.1 | 1.2 | - | - | - | - | - | - | - | - |
L | 平吹き | - | - | - | 1.0 | 1.1 | 1.2 | 1.3 | 1.4 | 1.5 | 1.6 | 1.8 | 2.0 | - | - |
(注)
重力式 : 塗料容器をスプレーガンの上部に取り付け、塗料が重力によって塗料
ノズルに送られる方式。
吸上式 : 塗料容器をスプレーガンの下部に取り付け、塗料がスプレーガンから
噴出する空気によって生じる負圧によって吸上げられる方式。
圧送式 : 塗料が加圧されて、塗料ノズルに送られる方式。
備考
1.被塗物による区分のSは、空気使用量、塗料噴出量が比較的少なく、一般に小形被塗物
に使用するものを示し、Lは空気使用量、塗料噴出量が比較的多く一般に大形被塗物に
使用するものを示す。
2.丸吹きスプレーガンとは、丸吹きだけができるものをいい、平吹きスプレーガンとは、平吹
きを主とするものをいう。
4.主要部品名称
スプレーガンの主要部品名称は、図1による。
5.性 能
5.1 空気使用量、塗料噴出量及びパターン開き
スプレーガンの空気使用量、塗料噴出量及びパターン開きは、
8.によって試験を行い、表2のとおりとする。
塗料供給方式 | 被塗物に よる区分 |
噴霧方式 | 塗料ノズル 口径(mm) |
空気使用量 L/min |
塗料噴出量 ml/min |
パターン開き (mm) |
重力式 | S | 丸吹き | 0.5 0.6 0.8 1.0 |
40以下 45以下 60以下 70以下 |
10以上 15以上 30以上 50以上 |
15以上 15以上 25以上 30以上 |
吸上式 重力式 |
S | 平吹き | 0.8 1.0 1.1 1.2 1.3 1.4 1.5 1.6 1.8 |
160以下 170以下 185以下 200以下 220以下 240以下 260以下 280以下 300以下 |
45以上 50以上 60以上 80以上 90以上 95以上 100以上 120以上 130以上 |
60以上 80以上 90以上 100以上 110以上 120以上 130以上 140以上 150以上 |
L | 平吹き | 1.3 1.4 1.5 1.6 1.8 2.0 2.5 3.0 |
280以下 310以下 330以下 350以下 400以下 450以下 480以下 560以下 |
120以上 130以上 140以上 160以上 180以上 200以上 230以上 270以上 |
150以上 155以上 160以上 170以上 180以上 200以上 230以上 260以上 |
|
圧送式 | S | 平吹き | 0.8 1.0 1.1 1.2 |
270以下 300以下 320以下 340以下 |
150以上 200以上 220以上 240以上 |
150以上 170以上 175以上 180以上 |
L | 平吹き | 1.0 1.1 1.2 1.3 1.4 1.5 1.6 1.8 2.0 |
500以下 560以下 620以下 650以下 660以下 670以下 700以下 710以下 720以下 |
250以上 300以上 350以上 400以上 460以上 520以上 600以上 650以上 700以上 |
200以上 220以上 240以上 260以上 280以上 300以上 320以上 330以上 340以上 |
5.2 パターン及び塗膜厚さの分布
パターン及び塗膜厚さの分布は、8.によって試験を行い、次による。
(1)パターンは、片寄り、中くびれなどの変形がなく、空気キャップを任意の位置から
180°回した後も同じパターンが得られること。
(2)塗膜厚さの分布は正常であり、塗膜の仕上がりに有害な影響を及ぼすような、粗い
塗料の噴霧粒子があってはならない。
(3)吹き始め及び吹き終わりに、塗料の粗い噴霧粒子が噴出したり、吹き付け中に息切れ
などがあってはならない。
6.構造及び寸法
スプレーガンの構造及び寸法は、次による。
(1)引き金を引くと空気が噴出し、次に塗料が噴出するものとする。
(2)塗料噴出量調節装置及びパターン開き調節装置を備えること。
但し、パターン開き調節装置は、丸吹きー平吹き切換装置を用いてもよい。
又、重力式丸吹きスプレーガンには、パターン開き調節装置を備えなくてもよい。
(3)各部から塗料の漏れがなく、性能に影響を及ぼすような空気漏れがないこと。
(4)空気ニップル及び塗料ニップルの寸法は表3による。
なお、ねじは、JIS B 0202によって、等級はB級とする。
表 3 空気ニップル及び塗料ニップルの寸法
ニップル | D ねじの呼び |
d | L | α(度) |
空気ニップル | G1/4 | 8.5 | 11以上 | 30 |
塗料ニップル | G1/4 | 8.5 | 11以上 | 30 |
G3/8 | 11.5 | 12以上 | 60 |
備 考 塗料ニップルのねじは、被塗物による区分SにはG1/4、LにはG3/8を
用いるのがよい。
7.材 料
各部に使用する材料は、その使用状態において、機械的に十分使用できるものであって、
5.の規定を満足するものでなければならない。
参 考 5.の規定を満足する材料の例を、参考表1に示す。
部 品 名 | 材 料 |
本 体 | JIS H 5202のAC3A、JIS H 5101のYBsC3 、JIS
H 5301のZDC 1、 JIS H 5302のADC 12又はJIS H 5111のBC 3 |
空気 キャップ |
JIS H 5101のYBsC3 、JIS H 5111のBC 3,のJIS
H 3250のC 3771BE 又はJIS H 5301のZDC 1 |
塗料ノズル | JIS G 3123のSGD 400-D、JIS G 4303のSUS410 又はJIS H 3250のC 3604BD |
ニードル弁 | JIS G 4309SUS410、JIS G 4401のSK 2 又は耐溶剤性合成樹脂 |
空 気 弁 | JIS H 3250のC3604BD、JIS G 4303のSUS410耐溶剤性合成樹脂 又は合成ゴム |
引 金 | JIS G 3141のSPCC、JIS G 4305のSUS430、JIS
H 5301のZDC 1、 JIS H 5302のADC 12又はJIS H 5111のBC 3 |
握 り | 本体の握りが別構造のものについては、耐溶剤性合成樹脂成形品を 用いてもよい。 |
関連規格
JIS G 3123 みがき棒鋼
JIS G 3141 冷間圧延鋼板及び鋼帯
JIS G 4303 ステンレス鋼棒
JIS G 4305 冷間圧延ステンレス鋼板
JIS G 4309 ステンレス鋼線
JIS G 4401 炭素工具鋼鋼材
JIS H 3250 銅及び銅合金棒
JIS H 5101 黄銅鋳物
JIS H 5111 青銅鋳物
JIS H 5202 アルミニウム合金鋳物
JIS H 5301 亜鉛合金ダイカスト
JIS H 5302 アルミニウム合金ダイカスト
8.試験方法
8.1 試験項目
スプレーガンの試験項目は、次による。
(ア) 空気使用量
(イ) 塗料噴出量
(ウ) パターン、パターン開き、塗膜厚さの分布及び塗料の噴霧粒子
(エ) 塗料漏れ
8.2 試験条件
スプレーガンの試験条件は表4による。
なお、塗料噴出量調節装置、パターン開き調節装置及び空気量調節装置は全開とする。
塗料 供給 方式 |
被塗物 による 区 分 |
試 験 条 件 | 塗 料 | ||
吹付空気圧力 kPa{kgf/?} |
吹付距離 mm |
移動速度 m/S |
|||
吸上式 重力式 |
S | 300 {3.0} |
200 | 0.05以上 | JIS K 5531 ラッカーエナメル 茶色とし、 コンシステンシーは、 JIS K 5402による フォードカップ形の器 を用いて測定したとき、 22±1秒とする。 |
吸上式 重力式 |
L | 350 {3.5} |
250 | 0.1以上 | |
圧送式 | S | 350 {3.5} |
200 | 0.1以上 | |
圧送式 | L | 350 {3.5} |
250 | 0.15以上 |
※コンシステンシー
非常に粘い性質又は、ビンガム物体の剛性すなわち変形に抵抗する性質を言う。
稠性ともいう。(岩波、理化学辞典)
粘度とは、ずり流動におけるずり応力とずり速度の比であるが、ニュートン流体に流動させる
とき、この値はずり速度が変わっても変わらない物質固有の値である。ところが非ニュートン
流体にずり流動させると、ずり応力とずり速度の間に比例関係が無い。すなわち一定の粘度
を示さない。
このような時、流動性を示すパラメーターをコンシステンシーという。ストーマー粘度計やフォ
ードカップで測定した値はコンシステンシーである。
(日本塗装技術協会、実用塗装・塗料用語辞典)
8.3 空気使用量
空気使用量の測定は、フロート形面積流量計(4)(以下流量計という)を用い、試験装置は、図2による。
図 2 試験装置
注 (4)JIS Z 8761参照.
流量計は、最大目盛りの±2%の正確度をもつものを使用し、振動が少ない場所を選びテーパー管の中心軸が鉛直になるように取り付ける。
なお、図2に示すP6は、吹付空気圧力を示す。
空気使用量の測定値は、次の式によって温度及び圧力の補正を行う。
ここに、 Q : 大気圧 t℃における空気使用量(l/min)
Q1 : 流量計の指示値(l/min)
t : 温度計の指示値(℃)
P : 圧力計の指示値(kPa){kgf/㎠}
P0 : 設計条件における圧力(kPa){kgf/㎠}
なお、流量計の設計基準は20℃、空気の密度γは1.20kg/m3の場合とする。
8.4 塗料噴出量
塗料噴出量の測定は次の方法による。
なお、測定時間は、30秒以上とし、三回以上繰り返した平均値とする。
(1) 重力式では、一定容量の塗料を塗料容器に入れ、噴出を始めてから塗料容器中の塗料
がなくなるまで(息切れの発生時点)の時間を測定し算出する。
(2) 吸上式では、メスシリンダに塗料を入れ、吸上管を注入し、塗料を噴出させた後、減容量
を測定し算出する。
(3) 圧送式では、塗料ニップル入口部の塗料圧力を、5.の規定を満足する状態に調整した
圧力で、塗料を霧化させないで噴出させ、排出した塗料容器を測定し算出する。
なお、このときのスプレーガンの接続ホースは、耐溶剤性ホースを用いる。
8.5 パターン、パターン開き、塗膜厚さの分布及び塗料の噴霧粒子
パターン、パターン開き、塗膜厚さの分布及び塗料の噴霧粒子パターン、パターン開き、塗膜
厚さの分布及び塗料の噴霧粒子の試験は次による。
(1) パターン試験は、平面に対し直角に、瞬間的に吹き付けたとき、パターンが正常であるか
どうかを調べる。
(2) パターン開きの測定は、JIS P 3101による秤量62〜67g/uの上質紙を垂直に保ち、
スプレーガンを紙面に平行に200mm以上等速移動を行って吹き付けたときの連続した塗り
跡の幅を、100mm以上の間隔で3点測定しその平均値を求める。
(3) 塗膜厚さの分布状態及び塗膜の仕上がりに有害な塗料の噴霧粒子の有無は、(1)及び(2)で
採取した塗り跡を用い、これを目視によって調べる。
8.6 塗料漏れ
塗料漏れ試験は、重力式では使用状態、圧送式では200kpa{12kgf/㎠}の塗料漏れ試験は、重力
式では使用状態、圧送式では200kpa{12kgf/㎠}の圧力を加え、それぞれ噴霧を行った後、引金を
放し1分間以上放置し、塗料漏れを調べる。
9.検 査
スプレーガンの検査は、性能、構造及び寸法について行い、5.及び6.の
規定を満足しなければならない。
10.製品の呼び方
スプレーガンの呼び方は、規格番号又は規格の名称、塗料供給方式、
被塗物による区分、噴霧方式、塗料ノズル口径による。
例1.JIS B 9809 重力式 S 丸吹き 1.0
例2.スプレーガン 圧送式 L 平吹き 1.5
11.表 示
スプレーガンには見やすいところに、容易に消えない方法で、次の事項を表示する。
但し、(4)及び(5)については、取扱い説明書に示してもよい。
(1) 製造業社名又はその登録商標
(2) 被塗物による区分
(3) 塗料ノズル口径
(4) 空気使用量
(5) 塗料噴出量
塗装機・関連機器