ロ ー ラ ー ブ ラ シ
1.基本事項
ローラーブラシ塗装は、ローラーカバー部分に塗料を含浸させ、被塗物に当て、ローラーを回転
させることにより、遠心力でカバーの中の塗料を被塗物に塗り広げていく。
この場合に塗料をブラシの中に含浸保持させる方法として次に示す2種類がある。
一般の塗料(合成樹脂エマルション等)
各種の繊維でできているブラシ部分を用いて、毛管現象により塗料を含浸させ、刷毛の3倍以上
の量の塗料を保持することができる。
高粘度形塗料(外装材、スチップル等)
凹凸やさざ波状の立体模様を形成する仕上をローラーブラシで行う場合には、多孔質を形成し
ている繊維状に塗料を“からめ”て含浸保持させる方法を用いる。
2.ローラーブラシの種類
a.ローラーの分類
ローラーは大きく繊維の織り方で2種類、繊維の種類で2種類の4つの分類に分けられる。
1)織り方
@ハイパイル
糸状の繊維が複雑に絡み合って、いわば綿状になっている織り方です。
含みのよさ、扱いの点で今までのローラーの主力になっています。
外装系に適
A織物(より糸)
縦横に交差する織物の目から糸が毛状に立ち上がり、それをより合わせている織り方です。
無泡ローラー等にも使われている織り方で、泡をかまず毛抜けも少ない、仕上がりのきれい
な織り方です。 内装系に適
2)繊維
@ アクリル
溶剤に強く、耐薬品性にも優れています。水分の含みはよいが、繊維自体はポリエステルに
比べて強度はありません。
Aポリエステル
耐溶剤、耐薬品性に優れ水は含みにくいですが、油性・溶剤は良く含みます。
繊維の強度はアクリルの3倍ほどあり毛抜け毛切れが少なく耐久性が良い。
※ どのローラーも100%アクリルということは無く、混毛されているケースが殆どであり、主に
何が占めているかということになる。
b.ローラーカバーの素材の種類
ローラーカバーに用いられている素材は主として繊維状のものと多孔質発泡体のものがあり、
その種類と特性を表2.1に示す。
素材の種類(パイル系)
1).繊維状素材
繊維状素材の場合に用いられる材質は天然ウール、合成繊維と各種あるが、その繊維の長さ
によって表2.2に示す3種類のローラーカバーがあり、被塗面の表面状態によって使い分ける。
@天然毛
毛皮をローラーにした高級品で、塗料の含みが大変良く、塗面の仕上がりも大変美しい。
強力溶剤系の塗料にも使用できるが、原皮を使用しているため親水性があり水性系塗料では
使用できない。又価格も高価である。(フロア−ペインター)
A純毛
動物性繊維は塗料含みがよくあらゆる塗料に使用できる。
より糸タイプの織布は腰が強く高粘度塗料に使用できる。(ウールローラー)
Bモヘア
アンゴラ、山羊の毛を素材としたもので、腰がありローラーマークも少ないが溶剤型塗料に向か
ない。獣毛繊維ともいう。
C合成繊維
ウーロン繊維に代表されるが、その定義は合成繊維を混毛させたローラー用途の繊維の総称。
JIS規格にウーロン繊維なるものはない。
毛足の長さ、繊維密度、単味の繊維の組合せ、ストレート系と収縮系の組合せ、より糸、断面形状、
長繊維(フィラメント系)、短繊維(ステープル系)、親水性繊維疎水性繊維、捲縮糸系の様々な
特性をもった繊維の組合せで構成されている。
強力溶剤型塗料や高粘度塗料に対しては100%の能力が発揮できない場合がある。
2).多孔質素材
多孔質素材は2種類に大きく分類できる。
@高粘度塗料を塗り付けるために用いるためのもの。
多孔質ハンドローラーといわれるもので、ウレタン発泡体の薄膜部分を苛性ソーダ-で溶解させ、
太い繊維ネット部分を残存させたローラーカバーを用いる。
高粘度塗材をネット部分に“からめ”て含浸させ、これを厚膜に塗り広げるものである。
A高粘度塗料を塗りつけた面に立体的な模様を形成するためのもの。
多孔質発泡体に図2.1に示すように模様をきざみこみ、その形状を塗付け面につけていくもので、
多孔質デザインローラーと呼ばれている。
表2.1 素材の特性とローラーの種類(塗装工業会) | |||
素材の種類 | 素材の特性 | 主なローラーの種類 | |
繊 維 |
天然毛 | ●毛皮をローラーにした高級品で、塗料の含みが大変よく、塗面 も非常に美しい。 ●強力な溶剤系の塗料でも使用できるが、原皮を用いているので 水性系塗料での使用は避ける。 |
ラムスキンローラー |
純 毛 | ●動物性繊維は塗料含みがよく、あらゆる塗料で使用できる。 ●ねじり糸タイプの織布は腰が強く粘度の高い塗料でも使用できる。 |
ウールローラー 接着剤ローラー 道路ラインローラー カーペットツイスト |
|
モヘア | ●アンゴラ、山羊の毛を素材としたもので腰があり、ローラーマーク も少ない。 ●あらゆる塗料で使用できるが、強溶剤には向かない。 |
仕上用ローラー | |
合成繊維 又は混毛 |
●ウーロン繊維に代表されるが、毛足の長さ、密度、組合せにより いろいろ特性がある。 ●長毛−粗面毛、中毛−万能用、短毛−平滑面用。 ●ねじり糸タイプの織布はクッション性がある。 ●あらゆる塗料で使用できるが、強溶剤系には向かない。 |
ウーローラー DXウーローラー BZローラー ジャンボローラー クッションローラー |
|
多 孔 性 ・ 発 泡 体 |
ウレタン | ●発泡倍率や架橋構造により特性が異なる。 ●低発泡のモルトタイプは塗料含みがよく、平滑面の塗装に最適。 発泡倍率の高いものは骨材入りの塗材の塗付に効果的である。 ●水性系塗料や塗材に用い、油性系の塗材での使用はできない。 |
モルトローラー マスチックローラー くばりローラー パターンローラー PNシリーズ |
酢ビ系 | ●発泡倍率により塗装パターンが異なる。 ●使用前に水に浸漬しローラーが軟化してから、スチップル塗材を 用いる |
スチップルローラー スチップルデザイン |
表2.2ローラーカバーの種類と使用区分 | |||
種 類 | 繊維の長さ | 用 途 | |
in | mm | ||
短毛 | 3/8以下 | 10 (6) |
平面(セメントモルタル面、プラスター面、ボード面等) |
中毛 | 3/8〜3/4以下 | 10〜20 (13) |
やや粗面(モルタル刷毛ひき面、コンクリートブロック面等) |
長毛 | 3/4〜11/2以下 | 20〜40 (25) |
粗面・曲面(外装材複層吹付材面、鋼製フェンス等) |
( )内はJIS規格値 |
c.ローラーブラシの形状の特徴
ローラーブラシの標準形は一般にウール状繊維を用いたもので、JIS S 9024において
規定されている。
ローラーブラシの中で形状の種類を構成しているのはローラーカバーの部分による。
ローラーカバーは標準的には表2.3に示すJISによって規定されたサイズがある。
しかし、被塗物の形状、面の状態、塗装条件などにおいて、各種のローラーカバーの形状が
求められ、開発されている。
表2.3 JIS規格によるローラーカバーのコアのサイズ(単位:mm) | |
コアの幅による種類 | コアの幅 |
4号 | 102 |
7号 | 178 |
9号 | 229 |
3.素材の特長(主なパイル系)
@ナイロン
(長所)比重が動物性繊維よりも軽く、伸度があり弾力性に富む。アルカリに強い。
(短所)酸に弱く、腰がない。日光で劣化しやすい。
Aポリエステル
(長所)長繊維、短繊維ともに強度がある。腰・しゃり感がある。酸に強く耐候性が良い。
(短所)塗料含みがやや少ない。
Bアクリル
(長所)しなやかな風合い。保水性があり、酸・アルカリに強い。染色しやすく鮮度がある。
(短所)強度がやや弱い。
Cアクリル系(アクリル共重合。アクリル+塩化ビニール)
(長所)アクリルより強度があり、大変いなやか。収縮性(バルキー)がある。疎水難燃。
(短所)一定した収縮をさせるためには熟練が必要。コストが高い。
4.ローラーについてのQ&A
Q1.太さの違う繊維を合わせて使用する目的は?
A1.風合いが出、ローラーマークを消す効果があります。
Q2.ストレート系(ノーマル)と収縮系(モダ)を合わせて使う目的は?
A2.ネタ持ちがよく、吐き出し効果があるためです。
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