15章 左官工事
3節 モルタル塗り
15.3.1 適用範囲
この節は、コンクリート下地、コンクリートブロック下地等の面に施すセメント、細骨材等を主材料とし
たモルタル塗りに適用する
15.3.2 材 料
(1) モルタルは、現場調合材料又は既調合材料とし、適用は特記による。
(ア) 現場調合材料
(a) セメントは、6.3.1[コンクリートの材料](1)による。
(b) 白色ポルトランドセメントは、JIS R 5210 (ポルトランドセメント) に準ずる。
(c) 細骨材
@ 砂は、良質で塩分、泥土、じんかい及び有機物を有害量含まないものとする。粒度は、
表15.3.1により、細粗粒が適切に混合したものとする。
表15.3.1 砂の粒度 | |
粒度(質量百分率) | 適 用 箇 所 等 |
5mmふるい通過分 100% 0.15mmふるい通過分 10%以下 |
下塗り、むら直し、中塗り、 ラス付け用、床モルタル用 |
2.5mmふるい通過分 100% 0.15mmふるい通過分 10%以下 |
上塗り |
A色砂の粒度は、表15.3.1に準ずる。
B内壁下塗り用軽量モルタルの細骨材は、セメント混和用軽量発泡骨材とし、建築基準法
に基づく不燃材料の指定又は認定を受けたものとする。
(イ) 既調合材料は、特記による。
(2)水は、水道水を使用する。
但し、井水を使用する場合は、清浄で塩分、鉄分、硫黄分、有機物等を有害量含まないも
のとする。
(3)混和材料は、次により、モルタルの性能に著しい悪影響を与えないものとする。
(ア)混和材は左官用消石灰、ドロマイトプラスター等とする。
また、色モルタルの場合は、色彩に影響を与えるものは避ける。
(イ)保水剤は、メチルセルロース等の水溶性樹脂とし実績等の資料を監督職員に提出する。
(ウ)建具回り等の充填モルタルに使用する防水剤及び凍結防止剤の実績等の資料を監督
職員に提出する。
(エ)ポリマーセメントモルタル、ポリマーセメントペースト用の混和剤は、JIS A 6203(セメ
ント混和用ポリマーディスパージョン及び再乳化形粉末樹脂)に基ずくセメント混和用ポリ
マーディスパージョンとする。
(オ)内壁下塗り用軽量モルタルに使用する混和材は、骨材の製造所の仕様による。
(カ)顔料は、耐アルカリ性の無機質で、直射日光等に対しても変色が少なく、金属を錆びさ
せないものとする。
(4) 吸水調整材の品質は、表15.3.2による。
表15.3.2 吸水調整材の品質 | ||
項 目 | 品 質 | 試験方法 |
外観 | 粗粒子、異物、凝固物等がないこと。 | 日本建築仕上学会規格M-101 (セメントモルタル塗り用吸水 調整材の品質基準)による。 |
全固形分 | 表示値±1.0%以内 | |
吸水性 | 30分間で1g以下 | |
標準状態 | 著しいひび割れ及び剥離がなく 接着強度が1.0N/mm2以上で、 界面破断が50%以下であること。 |
|
熱冷繰返し抵抗性 | ||
凍結融解抵抗性 | ||
熱アルカリ溶融抵抗性 |
(5) 下地調整塗材は、JIS A 6916(建築用下地調整塗材)による。
(6) 既製目地材の適用及び形状は、特記による。
15.3.3 調合及び塗厚
(1) モルタルの調合及び塗厚は、表15.3.3による。
なお、防水下地の床及び立上がりの塗厚は、15mm以上とする。
表15.3.3 調合(容積比)及び塗厚の標準値等 | ||||||||||
下地 | 施工箇所 | 下塗りラス付け | むら直し中塗り | 上塗り | 塗厚 (mm) |
|||||
セメント | 砂 | セメント | 砂 | セメント | 砂 | 混和材 | ||||
コンクリート、 コンクリート ブロック、 レンガ |
床 | 仕上げ | − | − | − | − | 1 | 2.5 | − | 30 |
張物下地 | − | − | − | − | 1 | 3 | − | |||
内 壁 | 1 | 2.5 | 1 | 3 | 1 | 3 | 適量 | 20 | ||
(注)1 | ||||||||||
外壁その他 (天井の類を除く) |
1 | 2.5 | 1 | 3 | 1 | 3 | − | 25以下 | ||
ラスシート、 メタルラス |
内 壁 | 1 | 2.5 | 1 | 3 | 1 | 3 | 適量 | 15 | |
(注)1 | ||||||||||
外 壁 | 1 | 2.5 | 1 | 3 | 1 | 3 | − | 20 | ||
天 井 | 12(注)2 | |||||||||
コンクリート、 コンクリート ブロック、 |
建具枠回り充填、 ガラスブロックの 金属枠回り充填 |
セメント 1 : 砂 3 雨掛り部分は、防水剤及び必要に応じて凍結防止剤入りとする。 但し、塩化物を主成分とする防水剤又は凍結防止剤は用いない。 なお、モルタルに用いる砂の塩分含有量は、Nacl換算で、0.04% (質量比)以下とする。 |
||||||||
(注) 1.内壁下塗り用軽量モルタルを使用する場合は、細骨材を砂に代えてセメント混和用軽量発泡骨 材とし、塗厚を5mm以内とすることができる。 2.耐防火上の指定がある場合は、20mm以上とする。 3.ラス付けの場合は、必要に応じて、すさを混入することができる。 4.ラス付けは、ラスの厚さより1mm程度厚くする。 5.ビニル床シート、ビニル床タイル等の場合は、床モルタルの塗厚には、張物材の厚さを含む。 |
(2)1回の塗厚は、7mm以下とする。但し床の場合を除く。
(3)仕上厚又は、全塗厚(タイル張りにあっては、張付けモルタルを含む)は25mm以下とする。
但し、床の場合を除く。
(4)ポリマーセメントモルタルの調合は、(1)による。
但し、混和材の使用量は、セメント質量の5%(全固形分換算)程度とずる。
(5)内壁下塗り用軽量モルタルのセメント量、細骨材料、混和材混入量等の調合は、細骨材
製造所の仕様による。
(6)ポリマーセメントペーストの混和剤の使用量は、セメント質量の5%(全固形分換算)程度
とずる。
(7)混和材料の使用量は、モルタルの強度等に著しい悪影響を与えない程度とずる。
(8)モルタルの練混ぜは、原則として、機械練りとする。
(9)1回の練混ぜ量は、60分以内に使い切れる量とする。
15.3.4 下地処理
(1)コンクリート、コンクリートブロック等の壁、床等で、ひずみ、不陸等の著しい箇所は、目荒
し、水洗い等のうえモルタル又は下地調整塗材で補修し、14日以上放置する。ただし、気象
条件等により、モルタルの接着が確保できる場合には、放置期間を短縮することができる。
(2) コンクリート、コンクリートブロック壁面は、デッキブラシ等で水洗いを行い、モルタルの接着
を妨げるものを除く。
但し、屋内の場合で工程等により、水洗いが困難な場合は、デッキブラシ等で清掃する工法に
よることができる。
(3)目荒し工法は、次による。
(ア)コンクリート壁面に高圧水洗処理で目荒しを行う場合は、水圧及び目荒らし時間を適切に
設定し、モルタルの接着に適した粗面に仕上げる。
(イ)高圧水洗処理に先立ち試験施工を行い、目荒しの状態について監督職員の承諾を受ける。
(4)コンクリート床面は、コンクリート硬化後、可能な限り早い時期に塗付けを行う。
なお、コンクリート打込み後、長時間放置したものは、水洗いを行う。
(5)壁面の場合で、15.3.3(3)の規定を満足しない場合は、補修塗り部分等に対して、ステン
レス製アンカーピンを縦横200mm程度の間隔に打込み、ステンレス鋼ラス等を張る。
15.3.5 工 法
(1) 壁塗りは、次による。
(ア)下塗りは、次による。
(a)15.3.4(2)の下地処理後、下地の乾燥具合を見計らい、吸水調整材を吸水調整材
製造所の仕様により、全面に塗る。
但し、下塗りに内装下塗り用軽量モルタル又は、ポリマーセメントモルタルを塗り付ける
場合以外は、15.3.4(2)の下地処理後、吸水調整材塗りに代えてポリマーセメント
ペーストを1〜2mm塗りとすることができる。
この場合、必要に応じて保水剤を使用する。
(b)塗付けは、吸水調整材塗りを行った場合は乾燥後、ポリマーセメントペースト塗りを行っ
た場合はポリマーセメントペーストが乾燥しないうちに、塗り残しのないよう全面に行う。
(c)下塗り面は、内壁下塗り用軽量モルタルの場合を除き、金ぐし類で荒らし目をつける。
(d)下塗り後、モルタル表面のドライアウトを防止するために、水湿しを行う。
(e)下塗り及びラス付けは、14日以上放置して、ひび割れ等を十分発生させてから次の
塗付けを行う。
但し、気象条件等により、モルタルの付着が確保できる場合には、放置期間を短縮する
ことができる。
(イ)むら直しは、次による。
(a)むらが著しい場合に行う。
(b)むら直しが、部分的な場合は下塗りに引き続いて行い、(ア)の(c)から(e)ばでによる。
(c)むら直し部分が比較的大きい場合は、(ア)(e)の後、塗付ける。
塗付け後、荒らし目を付け、7日以上放置する。
但し、気象条件等により、モルタルの付着が確保できる場合には、放置期間を短縮する
ことができる。
(ウ)中塗りは、次による。
出隅、入隅、ちり回り等は、定規塗りを行い、定規通しよく平らに塗付ける。
(エ)上塗りは、次による。
中塗りの状態を見計らい、面、角、ちり回り等に注意し、次により、コテむらなく平らに
なるように仕上る。
@金ごて仕上の場合は、金ごてで押さえて仕上る。
A木ごて仕上の場合は、水引き具合を見計らい、木ごてでむらを取り、平坦に仕上る。
Bはけ引き仕上の場合は、木ごてで均したのち、少量の水を含ませた刷毛を引き、刷毛
目の通りよく仕上る。
(オ)仕上の種類は、次による。
仕上の種類は、施工箇所に応じて、表15.3.4を標準とする。
表15.3.4 仕上の種類 | |
種 類 | 施 工 箇 所 |
金ごて | 一般塗装下地、壁紙張り下地、防水下地、内装タイル接着剤張り下地 |
木ごて | セメントモルタル張りタイル下地 |
はけ引き | − |
(注)仕上塗材下地の場合は、15.6.4(3)による。 |
(カ)目地を設ける場合は、あらかじめ目地棒で通りよく仕切り、仕上げ後、目地棒を外し、
目地塗りをする。
なお、既製目地材は、あらかじめ所定の位置に通りよく取り付け、壁塗りを行う。
(3)ラス下地モルタル塗りは、次による。
(ア)下塗り (ラス付け)は、次による。
(a)下塗り面は、モルタルをラス厚より1mm程度厚くし、モルタルがラスを十分被覆するよ
うにし、ラスが変形しない程度にこて圧を調整しながら塗り付ける。
(b)下塗り面は、全面に金ぐしの類で荒らし目をつける。
(c)下塗り後、モルタル表面のドライアウトを防止するために水湿しを行う。
(d)下塗り及びラス付けは、14日以上放置して、ひび割れ等を十分発生させた後、次の塗付
けにかかる。ただし、気象条件等により、モルタルの付着が確保できる場合には、放置
期間を短縮することができる。
(イ)むら直しは、次による。
(a)塗厚が厚い場合又はむらが著しい場合は、むら直しを行う。
(b)むら直しは、下塗りに引き続いて行い、むら直し後、(ア)の(b)から(d)までを行う。
(c)中塗りは、(1)(ウ)による。
(d)上塗りは、(1)(エ)による。
(e)仕上げの種類は、表15.3.4による。
(f)目地を設ける場合は、(1)(カ)による。
(4)タイル張り下地等の下地モルタル塗り及び下地調整塗材塗りは、次による。
(ア)床は、次による。
(a)塗厚は、全仕上げ厚さ、タイル厚さ等から定める。
(b)床は、11.2.7[施工](2)(ア)の場合を除き、(2)による。ただし、表面は木ごてで
仕上げる
(イ) 壁は、次による。
(a) セメントモルタル張りタイル下地は、次による。
@ 塗厚は、全仕上げ厚さ、タイル厚さ等から定める。
A外装タイルセメントモルタル張りの場合、コンクリートの表面の仕上がり状態は、
表6.2.5[コンクリートの仕上りの平たんさの種別]のb種とする。
Bタイル張りが、密着張り、改良積上げ張り (内装タイルの場合を除く。) 、改良
圧着張り、マスク張り若しくはモザイクタイル張り又はセメント系厚付け仕上塗
材の場合は、中塗りまで行い、木ごて押えとする。
Cタイル張りが、内装タイルの改良積上げ張りの場合、厚さ6mm の下塗り (ラス
下地の場合を含む。) を行う。
Dモルタル下地面の仕上げは、木ごて押えとし、その精度は、モザイクタイルでは
2mにつき3o、小口以上のタイルでは2mにつき4oとする。
なお、精度について、確認を行い、その結果を監督職員に報告する。
(b)タイル接着剤張り下地は、次による。
@外装タイル接着剤張りの場合、コンクリートの表面の仕上がり状態は、表6.2.4
[打放し仕上げの種別]のA種及び表 6.2.5の a種とし、15.3.2(5)によるセメント系
下地調整厚塗材2種 (下地調整塗材 CM−2) 2回塗り、総厚10o以上とする。
A外装タイル接着剤張りの場合の仕上げは、原則として、金ごて1回押えとし、
その精度は1mにつき3o以下とする。
なお、精度について確認を行い、その結果を監督職員に報告する。
Bタイル張りが、内装タイル接着剤張りの場合、中塗りまで行い、金ごてで仕上げる。
(c) (a)及び(b)の下地モルタル塗り及び下地調整塗材塗りの確認は、次による。
@外装タイル張り下地等の下地モルタル塗り及び下地調整塗材塗りの硬化後、全面
にわたり打診を行う。
なお、浮き及び精度について確認を行い、その結果を監督職員に報告する。
A浮き及び精度について、不具合が確認された場合は直ちに補修を行う。
B外装タイル張り下地等の下地モルタル塗り及び下地調整塗材塗りの接着力試験は、
特記による。
(ウ)外壁の場合は、タイルの伸縮調整目地に合わせて幅10mm以上の伸縮調整目地を設ける。
伸縮調整目地は、発泡合成樹脂板の類を用い、目地周辺から浮きが発生しないよう、構造
体まで達するようにする。
平成31年版 公共建築工事標準仕様書15章左官工事